外国を訪ねると、開いてさえいれば必ず市場に足を運ぶようにしています。売られている食料品を見て、人々の購入の仕方を観察して、その国その国の台所事情をきちんと把握しようとするのです。生活の根幹たる食文化を考察しつつ、異文化理解に努めようという趣旨であります。
ともっともらしく書いてみましたが、当然そんな高邁な精神によるものではなく、単に僕が異常食欲者(要は食いしん坊)で食べ物を見ると嬉しくなるので、いつも市場を覗くことに決めているにすぎません。今回チュニジアの市場もなかなか興味深かったです。
まずこちらは、青果市場です。やはり地中海沿岸地方、オレンジ、レモン、トマトが大量に売られているのが目立ちました。もの忘れが酷くていくらだったか数字を覚えていないのですが、オレンジが驚異的な値段だったことは確かです。1人当たりGNI(国民総所得)が2,970米ドル(2006年)とはいえ、作れども作れども、売れども売れども・・・、といった印象を受けました。
続いて魚市場。イカやタコ、そしてカツオ(もしくはそれに似ている魚)がとても美味しそうでした。バルセロナ、ナポリででも同様の印象を受けましたがが、やはり地中海沿岸であれば海の恵みがたっぷりです。やや不気味だったのが、皮が剥かれた姿でずらっと並んだエイ。チュニジア人はどうやら食べるようです。魚の尾びれ、顎の骨、ヒトデを店先にオブジェとして飾っているところも多かったです。チュニジア魚屋さんの間の流行?
そしてこちらが今回1番の衝撃、肉市場です。何が衝撃って、イスラム国家だから豚が全く売られていないとか、羊がたくさん売られているとか、そういうことではなくて、ほぼ全ての肉屋の店先に牛の生首が飾られているということです。この写真の店のものなんて、ご丁寧に舌を出した状態にセットされています。そういえば吊ってある肉もよくよく見てみると、牛や羊のボディラインがしっかりと分かるものばかりです。まさに「動物を殺した肉」を売っていることがよく分かりました。大抵の日本人は完全に怖気づいてしまいそうですが、実はこういった売り方の方が日々生命の犠牲の上に肉があることを実感できて、感謝しつつ食べることができるのかもしれません。とはいうものの、やっぱり抵抗感あるかなあ。
牛の生首のアップ写真。さあ、これを見てどう感じるでしょう。うーん、やっぱり見なくていいなら見ないでいいかな。美味しい肉でも食べづらくなりそう。そのように事実から目を背けていてはいけないでしょうか。
さて、衝撃というか、思わず鳥肌が立ってしまったのは、食用カタツムリが大量に売られているのが目に入ったときでした。たしかにフレンチでエスカルゴを食べることはありますが、これだけの数が絡まりあっている姿を見ると、うぅ、おぇぇ、といった感じです。あえてここはサムネイル写真を小さくしました。クリックすると拡大されますが、度胸の座った方、もしくは、軟体動物が愛しくて仕方がないという方以外は控えられた方がよろしいかと思います。因みに僕が撮ったオリジナル写真のサイズは、3888×2592ピクセルです。より大きいサイズで1つ1つのカタツムリをじっくりと観察されたい方はご一報下さい。
最後に気を取り直して、スパイス市場です。これはいかにもアラブ的ですね。何とも日本人には馴染みの薄い香りを辺りに漂わせていました。
以上、かなり非日常を感じられたチュニジアの市場でした。